食事量20パーセント

部屋に入ると、元気なくベッドに寝る母がいた。
館長さんによると「歯を抜いたことがショックで食欲がないようです」とのこと。
ショックだろうなぁ、その気持ちはわかるような気がする。前歯がそっくり無くなっていると思ったが、上の中央に小さく真っ黒なかけらが残っている。外した歯がどんなふうになっていたのかわからないが、そこも作り物の歯(入れ歯とも挿し歯とも違いそうだ)を固定するために残した歯なのだろうか。下の歯もむかし味噌っ歯といったような痛んだ歯がジグザグに残っている。自分で鏡を見たとしたらがっかりしただろう。急に上前歯が無くなったせいで上唇を噛みそうになるようで、慣れるまで日にちがかかるかもしれない。食欲が落ちるのももっともだ。
ドライブに出ようかと促して身体を起こすと、着ているものもちぐはぐだ。肌着の上にロングブラウス、その上に毛糸のベスト、さらに上っ張り。丈の長いブラウスがベストの下でスカートのようにヒラヒラ見えている。身だしなみを気にしていた母はもういない。
星野珈琲に入って(ロール)ケーキセットを頼んだが、ケーキはひとくち、珈琲は4分の一も飲まなかった。店のことは記憶にあるようで「ここは前にも来たね」と窓の外を眺めていた。「なんでこんな病気になったんだろうねぇ」というので「病気じゃないよ、どこも悪くないでしょ? 歳をとっただけよ」というと「あたし、何歳なの?」と聞くから「90歳よ」というといつものように心底驚いたようだ(^^ゞ その後「なんでこんな病気になったんだろうねぇ」と何度も何度も繰り返すので返答に困った。励ましが励ましにならないのだ。

きょうは息子の45歳の誕生日。朝、携帯からメールを送ったら、昼、「どもども」と返信があった。今日か明日か忘れたが、家族の後を追って嫁さんの実家に行くことになっている。気をつけていってらっしゃ〜い。