お風呂上がり

訪問すると母は入浴中だった。暫く待つとさっぱりした顔で出てきた。午前中は髪をカットしたそうで、お化粧もしたのだが入浴で落としてしまったそうだ。本人は化粧をしたことは忘れていた。
お菓子の箱はいつものように空っぽで、私達が持って行った菓子を入れて喜んだ。チョコレートを一つ食べて「美味しい」といい、しばらくしてその包み紙を見て「あら、これは何だろう?」と言った。その現象にはなれたはずなのに、本当に直前の記憶がないのだなぁとあらためて思い知った。
母は「あと何年生きるんだろう」という。「何年生きられるだろう」ではなく「何年生きなければならないのだろう」という母の思いが言葉の端々にみられる。