ちゃんと食べなくちゃ

ちょうど昼食の時間だった。母はベッドの背をたてて上半身を起こしていた。私の顔を見ると「ああ!」と嬉しそうだった。食事はほとんど手がつけられていなくて、看護婦さんも「食べないと点滴が外せないから頑張ってね」と励ましてくれた。促されておかゆを一口。「食べたくないのよ」とすすまない。リハビリが始まれば食欲が出るのか、食べなければリハビリも進まないのか、どっちだろう。
「どうしてこんな病気になっちゃったんだろうねぇ」
「病気じゃないよ。骨折して救急車で運ばれて来たのよ。で、手術したの」
「あらそう・・・」
こんなやり取りをしても、すぐに忘れて同じことの繰り返しだ。
骨折、救急車。日頃無い出来事なのに、何も記憶に残らないのだから不思議。