引き出しはもう開かない

「前にいた男の人と女の人がいなくなったの」と母。グループホームにいた時から言い続けている。良くお世話をしてくれた職員さんのことだと思う。「前からいた人はみんな居なくなった」というのは今のホームに移ってからだ。入所者さんのことらしい。グループホームにいた時は最終的に母が一番の古株になっていたから、前からいた人は確かにみんな居なくなった。今のホームに移ったことを認識していないようなので、みんな居なくなったのではなくて自分が新人だからだ。
今日も同じことを繰り返し言うので「前の職員さんはいなくなってしまったけど、新しい職員さんがたくさんいるでしょ?」と言ったら「誰もいないわよ」と母が言う。お風呂に入るとき介添えしてくれるだろうし、食事も出してくれるだろうしといろいろ言っても、誰もいないという。お風呂は自分で入っているし、ご飯は出ているから食べるのだと。母の記憶の引き出しはだいぶ前に閉じられたままで、もう開かない。新しい記憶は全く定着しないのだ。
トイレットペーパーが無くなっているかもしれないと思い、きょうは8ロール入りを2個届けた。ペーパーホルダーには何も入っていなかったが、引き出しに3ロールと、都度ポケットに溜め込むペーパーがたくさんあった。ポケットにはトイレットペーパーを入れずに「ポケットティッシュを入れておいてね」とトイレに流せるポケットティッシュも8個入り1パック届け、1つポケットに入れて見せたが、わからないだろうなぁ。